横尾直さん(靴クリエイター/NYC)|インタビュー

「アート&アルチザン」をコンセプトにしながら 固定概念にとらわれない靴づくりをしていきたい

ビスポーク&パターンオーダー靴の「Nao Yokoo」と既成靴「KARIBAKI」という独自のブランドを展開する横尾直さん。

靴づくりの本場であるイギリスのコードウェイナーズ・カレッジで靴制作の基礎を学び、日本のギルドフットウェアカレッジで本格的なハンドメイド靴制作に関する技術を学んだ気鋭の靴クリエイターです。

横尾さんを語る上で欠かせないのが、ご自身のコンセプトとしている「アート&アルチザン」。

今回、インタビューをさせていただいて、このコンセプトに派生する「ファッション」「アート」「技術力」に加え、彼女が持ち合わせているひとつの視点を強く感じました。 その視点とは……。

横尾さんがつくるビスポークシューズと「KARIBAKI」 横尾さんがつくるビスポークシューズと「KARIBAKI」
工房にはミシンが並ぶ ミシンが並ぶ工房(東京都板橋区)

行動力で切り拓いたイギリスでの学び

学生の頃からファッションやアートなど造形に関するものに関心を持っていて、建築学科に進学。
靴については、建築についての知識を修めてからイギリスで学びたいという想いを温めていました。
それというのも、高校生の頃にファッション誌でイギリスの靴学校を紹介した記事を読んだからです。
ただ、その当時はインターネットで簡単に調べられるような時代ではなかったので、いざイギリスの学校に行こうというときには、情報が見つからずにコードウェイナーズに入学するまでには大変な苦労をしました。
ほとんど情報がないまま、とにかく渡英。 現地で靴学校を探しまわって、ようやくコードウェイナーズにたどり着きました。
この当時の行動力は凄まじかったな、と感心するほどですね。

アッパー(靴の甲にあたる部分の革)を制作 アッパー(靴の甲にあたる部分の革)を制作
制作途中の作品が並ぶラック 制作途中の作品が並ぶラック

作家として自身のブランドを持つ難しさ

イギリスでは、靴制作に関する基礎的な知識と、デザイン、絵の勉強など全般的に学んできました。
そして、帰国後は、皮革関連の情報を提供したり、コンサルティングをする企業へ入社。
取材をしたり、商品企画のコーディネートといった仕事をしていましたが、やはり、自身の工房を構えて、靴づくりをしたいという気持ちが大きくなって……。

退社をして、工房を構えたタイミングで、コードウェイナーズの先輩である山口千尋さんが「ギルドフットウェアカレッジ」を立ち上げると聞き、迷わず1期生として入学しました。

それというのも、イギリスで学んだのは靴づくりに関する基礎的な知識であって、技術までは修得できていないと感じていたからです。

手製法に関して、きちんと勉強ができて、ここで自分なりの方向性がつかめた気がします。

やはり、学校を出たからといって、「プロ」というわけではありません。

靴職人として、作りたいものがあるならば、それを具現化できる技術を持っているのが「プロ」だと思います。
私の場合は、しっかりとした技術を学ばないとつくれないレベルのものを追求していたので、そこから何を学ぶべきかを考えるようにしていました。
逆に言うと、自分がつくりたいもの・やりたいことを予め分っていないと、必要な知識・積むべき経験が選択できないと思います。

もし、自分自身の靴ブランドを立ち上げて展開するならば、当然デザイン力・技術力も必要ですし、ブランディング力などの総合力が必要になります。

ただ、これは本当に難しいことだと感じています。
必要な経験をどれだけの積んできたかがモノを言うということですね。

Nao Yokooメンズシューズ 時代性を取り入れながらも、普遍性も表現した「Nao Yokoo」のメンズシューズ。
「Nao Yokoo」レディースシューズ ヒール形状に注目したいレディース靴。ヒール部分は革を積み上げてかたどっていく。

ロンドン、パリ、ミラノなど、発表の場を海外に

パリのセレクトショップが、展示会に出展していた私の作品に目を留めてくれたのをきっかけにして、5年前からは、ロンドンやパリ、ミラノ、フィレンツェなど、発表の場を海外に広げるようになりました。
今は、海外の展示会に向けて、新作のデザインをしています。
私の靴は、複雑な手縫い方法を駆使したもので、機械でつくれるものではありません。
あえて、手縫いでしか表現できない芸術性と高い技術力が求められるものしか、つくらないようにしています。
また、つくりたい靴のイメージを表現するためには、固定概念にとらわれないことが大切だと思っています。
ですから、新しい方法を自分で開拓してでも、靴をつくりあげていきます。
思い描いたイメージ通りに靴ができたときは、デザイナーとしても、職人としても一番うれしいですね。
今後さらにクリエイターとしての活動の場を広げるためにも海外見据えながら、国内でも積極的に展開できるように、来年にむけて個展の準備を進めていこうと考えています。

「Nao Yokoo」のレディースシューズ
オーダーの時にサイズを試す仮履き用の靴を商品化した「KARIBAKI」。 オーダーの時にサイズを試す仮履き用の靴を商品化した「KARIBAKI」。

[編集後記]

まさに、「アーティスト」という言葉がふさわしく感性豊かな横尾さん。
彼女が言うように、靴づくりをする者であれば、デザイン力と技術力が求められるのは、ある意味当然かもしれません。

ただ、今回のインタビューで見えてきたのは、横尾さんにはマーケティング力も備わっていることです。
これはご自身のブランドを展開されるためにも、必要なことですし、自分のキャリアを考える時にも持ち合わせておきたい力と言えるのではないでしょうか。

とりわけ、デザインが保守的で大きなトレンドや変化が少ない紳士靴のような分野で横尾さんのようにデザイン力を武器とする場合には、時代性に加え、時代性を超えた普遍的なものが求められます。
それらのバランスをとれる理由は、靴づくりを学んできた過程だけでなく、一時期従事していたコンサルタントの仕事が生きているからかもしれません。

横尾さんは、建築を学び、アートを学び、イギリスのカレッジで靴づくりの土台を築いています。 そして、日本では技術力とマーケティングの視点を身につけました。
だからこそ、ブランド「Nao Yokoo」が成り立っていて、先見性や創造力のあるデザインへの理解が深いヨーロッパからも高い評価を受けているのだと思います。
来年の個展が楽しみです!!

横尾直さん プロフィール

横尾さんのブランド

NYC代表。東京都出身。文化学院建築学科で建築を学んだ後に、渡英。イギリス靴学校コードウェイナーズ・カレッジにて靴づくりを学ぶ。創作性の高い靴で注目を集め、2010年以降、イタリアの「MICAM」や「PITTI UOMO」への出展を開始。ビスポーク&パターンオーダー靴「Nao Yokoo」と既成靴「KARIBAKI」をメンズ・レディースともに展開する。

【お問い合わせ先】 NYC URL:http://naoyokoo.com/