オーダーメイドシューズ<シューリパブリック>高山純一さんインタビューメインイメージ

高山純一さん|Shoe Republic(シュー リパブリック)|インタビュー

ご自身の足にあった靴と出会い
「履きやすさ」や「その靴の良さ」を体感してもらいたい

2003年に埼玉県加須市でオーダーメイドシューズ工房<Shoe Republic(シュー リパブリック)>を立ち上げた靴職人・高山純一さん。
スタート時から、意識していたのは、どこにでも履いていけるような「日常」使いできるオーダーシューズです。
以来、オーダーの敷居を下げて、マーケットを大きくするために、靴のクオリティと価格のバランスの良いオーダーシューズをつくりつづけています。
今回は、アイレット編集部が加須市の工房にお邪魔し、高山さんにインタビューをさせていただきました。

英国で学び、帰国後さまざまな経験を積む中で得た気づき。

―靴に興味を持ったきっかけを教えてください。

大学卒業後、自動車関連の会社に就職していました。
それまで、特別靴に興味があったわけではありません。
改めて考えてみると、故・藤村俊二さんがドイツで靴をオーダーしているテレビ番組を見たことがきっかけだと思います。
とても粋で格好良くて、印象的でした。
あとは、家の環境がものづくりをしやすかったというのもあります。
祖父が宮大工で、父は工務店をやっていましたので、子どもの頃から家にある木材をつかって遊んでいましたね。
それから、雑誌でたまたま英国ノーザンプトンにある公立の靴職業訓練校トレシャム インスティテュート(以下、トレシャム)の情報を見つけて、留学の算段をつけました。

―トレシャムというと、これまでインタビューさせていただいた方も多く学んでいた印象です。

そうですね。福田洋平さん川口昭司さん勝川永一さんもトレシャム出身です。
僕は、彼らより、少し早い時期に学んでいて、同期には<The Shoe Work Shop>の末光宏さんがいました。
トレシャムでは、1年間でパターンやクロージング、ラスティングなど、マシンメイドでの靴づくりの基礎を万遍なく学ぶことができました。

―帰国後、すぐにご自身の工房を立ち上げたのですか?

トレシャムで学んだ1年間では、基礎が備わったレベル。
なので、いきなり工房を立ち上げるということは考えませんでした。
帰国後には、靴店でフィッティングの勉強をさせていただいた後、シューメーカーにパタンナーとして就職。
それから、企画や底付など、さまざまな職種で経験を積んできました。

―<シュー リパブリック>を立ち上げたきっかけは?

トレシャムでともに学んだ末光さんの影響が大きかったと思います。
末光さんは帰国後、埼玉県越谷市に工房「そのみつ」を開き、靴づくりをしていて、僕にもできるんじゃないか、と良い刺激になりました。

オーダーメイドシューズ<シュー リパブリック>高山純一さんインタビュー工房イメージ1
工房内は、英国の雰囲気を感じるデコレーション。
オーダーメイドシューズ<シュー リパブリック>高山純一さんインタビューギブソンブーツイメージ
人気の高いギブソンブーツ。

「日常使いのオーダー靴」というコンセプトを貫くために。

―<シュー リパブリック>のコンセプトを教えてください。

<シュー リパブリック>のコンセプトは、「日常仕様の快適オーダーメイド」です。
オーダーメイドと言うと、贅沢品と捉えている方も多いかもしれませんが、<シュー リパブリック>の誂え靴は、特別な時に履く晴れの日のためだけの靴ではありません。
むしろ、営業で長時間歩かなくてはならないという時に最適な靴です。
工芸品のように美しい靴もあるけれど、私の靴はその対極にあります。
それは、靴の仕事に携わってきた中で、靴は道具のひとつという意識があったからだと思います。
その一方で、お客様を含め、多くの方には、靴についてもっと知ってもらわなくてはならない部分があるように感じていました。
ご自身にあった靴を履いていただくことができれば、「履きやすさ」や「その靴の良さ」を体感してもらえるはず、ということです。
そこから、「スーツにも履けて、軽い運動もできる」そんな日常使いができる仕立てで、それぞれの足に合った靴をつくれるオーダーメイドという形態を選択しました。

―フルオーダーメイドでありながら、価格についても手頃な印象を受けます。

多くの方にご自身にあった靴を履いてもらいたいという目的がありますので、お客様に納得いただけるクオリティでありながらコストパフォーマンスに優れた価格というのは絶対条件です。
ですから、価格は最高でもここまでというラインを決めて、こだわる部分と割り切る部分を判断しています。
例えば、選べる革についても、価格面をシビアに見ますし、作業も効率面を重視して、出し縫いは機械にしています。
ビスポークなら手縫いでなくちゃ、という方もいらっしゃるかもしれませんが、クオリティや履き心地に影響しない部分の妥協はOK。
ただし、履き心地に直結することは譲らずに手作業で行っています。
お客様から見てOKとしてもらえるラインが90点の靴だとしたら、その90点のクオリティを保つことが大切です。
それ以上のものをつくるために、価格が倍になってしまうようだったら、それは本末転倒。
そういう点からもコストダウンを重要視して、ガンガンさげてきました。
アトリエを郊外にしているのも、コスト面を鑑みてのことです。
賃料や広告費、販売マージンなど原価以外のものを極力省き、靴の価格を抑えています。

<SHOE REPUBLIC|シュー リパブリック>情報メインイメージ

―オーダーする方はどのような方が多いですか。

靴が好きでコレクションしているという方やオーダーメイドの靴を履いてきた方ではなく、ごく一般的な意識を持った方が多いですね。
一般的なというのは、それまで既製品の平均価格の靴を履いてきた方です。
オーダー慣れしていない方にとっては、いくら手頃なオーダーメイドと言っても、最初は高く感じたと思います。

―そうした方をターゲットにされる理由は?

<シュー リパブリック>スタート時に思ったのが、ビスポークのマーケットが小さすぎるということです。
小さなマーケットの中に、つくり手がいて競争をしていくと、共倒れになるのではないか、と。
それなら、マーケットを大きくしなくちゃいけないと思いました。
そこで、最初は、価格を10万円程度に抑えたり、グッドイヤーウェルテッド製法でより手頃な価格の靴をつくって、取引のあるお店に置いてもらったり。
実際に履いて、履き心地の良さを体験してもらってから、「もっと履き心地の良い靴もあります」と徐々に欲を出してもらえるようにしてみました(笑)。

オーダーメイドシューズ<シュー リパブリック>高山純一さんインタビュー工房イメージ ミシン
工房は、コンパクトで作業効率が良さそう。
オーダーメイドシューズ<シュー リパブリック>高山純一さんインタビュー 作業イメージ
履き心地を左右する部分は、時間がかかっても手作業にこだわります。

履いて疲れない・蒸れない靴にするための工夫

―<シュー リパブリック>の靴が評価されていると感じる点は?

1番は、履き心地の良さですね。
それは、具体的に言うと、履いていて疲れない、夏でも蒸れない、ということです。
実は、靴を履いていて足が蒸れる理由は3つあります。
(1)靴の中で足がズレるとその摩擦熱で蒸れる。(2)摩擦により足がストレスを感じて、さらに汗をかき、蒸れる。(3)汗を靴が吸収せずに蒸れる。
そのため、オーダーで足に合った靴ができれば、(1)(2)は解決するはずです。
(3)を解決するために、<シュー リパブリック>では工夫をしているので、それが履き心地につながっていると思っています。

―どのような工夫をされているのでしょう?

それは、素材の工夫で、インソールの厚さを調整しています。
普通のグッドイヤーウェルテッド製法の靴では、インソールは3mm程度が標準的です。
ただ、この厚みだと汗を吸いきれません。
ハンドソーンウェルテッド製法の場合には、もっと厚みのある5-6mm程度のインソールを使います。
一方、<シュー リパブリック>で使うインソールは、7.5-8mm程度ものです。
この厚みがあれば、汗を効率的に吸収してくれます。

―インソールを厚くすることで、靴自体は重くなりませんか?

そうですね。実質は数十グラム重くなります。
でも、持ったら重いけれど、履いたら軽いというのが、<シュー リパブリック>の靴の特徴です。
靴というのは、つま先が重たいと、ふくらはぎのあたりの脛(すね)の筋肉で持ち上げなくてはならないので、すごく重たく感じるのが一般的です。
これに対して、踵が重い靴は腿(もも)の力で持ち上げることができるので、さほど足に負担がかかりません。 <シュー リパブリック>の靴は、バランスを踵荷重にしているので、「履いたら軽い」靴になっています。 また、足に靴がぴったり合っていれば、基本的には靴の重さが気にならないはずです。
そのため、履いていて重い、というご意見をいただいたことはありません。

あとは、靴は車と同じで、つくりがしっかりしていると、外からの衝撃があってもどこかしら衝撃を分散したり、吸収したりして、足は快適なまま歩けます。
足にとっては、踵部分をねじれないようにすることで、疲れなくなる傾向があるのです。

オーダーメイドシューズ<シュー リパブリック>高山純一さんインタビュー インソールイメージ
インソールの厚みはなんと7.5-8mm程度。汗を効率的に吸収してくれる厚みです。
オーダーメイドシューズ<シュー リパブリック>高山純一さんインタビュー 設計イメージ
<シュー リパブリック>の靴は、踵部分がねじれないように設計されています。

靴についてもっともっと多くの人に知ってもらいたい。

―アトリエ以外で行われるイベントなども積極的に行っていますね?

はい。リペア工房を備えたシューズショップ<リファーレ>や、神戸・三宮にあるユニークなオリジナル商品を取り揃える<SUN>では定期的に採寸会などを開催したり、コージ製靴新潟工場ではファミリーセールに出品したりと、積極的に参加しています。
その目的は、靴や足に関心を持っていただくためです。
ご自身にとって「良い靴を履かなくちゃいけないな」と感じるきっかけになれれば嬉しいですね。

―イベントの際にはオーダーもできますか?

イベント期間中には、注文も承っています。
ただし、価格は、直接工房でオーダーいただく価格と異なる価格です。
工房は埼玉の北部にあるので、なかなかご足労いただけないという方には、都内の<リファーレ>でご注文いただけると時間的なメリットを感じていただけると思います。
どちらでも、お客様のご都合によって選んでいただきたいですね。

―新しい取り組みはありますか。

「雨の日&出張用の靴」の製作を昨年度より開始し、期間限定でご注文を承りました。
これがとても好評だったので、今年も、8月・9月の期間限定で受け付ける予定です。
この「雨の日&出張用の靴」というのは、お客様のご要望から生まれたもので、1週間程度立て続けに履けるような仕様で雨にも強い靴のこと。
通常のハンドソーンウェルテッド製法ではなくて、ブラックラピド製法でつくります。
特に、工夫をしたのは、インソールです。
取り外し可能にしただけでなく、スペアのインソールも販売しますので、インソールを取り替えながらローテーションでお使いいただくことも可能です。

また、11月11日(土)・12日(日)には愛知県一宮市の「Re-TAiL(リテイル)」でものづくりのつくり手が集うイベントを主催します。
このイベントでは、ラスティングやウェルティングのパフォーマンスを披露する予定です。
愛知県一宮市は日本の中心とも言える立地の地域。
全国からつくり手が集まりますので、ぜひ、ものづくりの熱気を体感しにお越しください。

オーダーメイドシューズ<シュー リパブリック>高山純一さんインタビュー 雨の日&出張用の靴インソールイメージ
「雨の日&出張用の靴」の取り外せるインソール。

[編集後記]

<リファーレ>恵比寿店で行われた足の採寸会で取材をさせていただいてから、ようやく今回のインタビューが実現。
インタビューはしっかりやろうと思いながらも、「いろいろと教えてもらおう!」という気持ちでお邪魔してきました。 それというのも、高山純一さんは靴に関する知識の深さはもちろんのこと、靴業界随一の理論派だと感じていたからです。
「なぜ〇〇なのか」という素朴な靴に関する疑問にも、明快にお応えしていただける方なんですね。
今回のインタビューを通して、なぜ高山さんは理論派なのかがわかったような気がします。
そのひとつが、何事にも客観的な視点を持っているから、ということ。
例えば、90点のものづくりをしている点や、靴のデザインについては英国靴のパターンの完成度が高いから、そのまま採用しているという点。
ものづくりをしていると、完成度を高めることに注力しすぎたり、独自のエッセンスを重視しすぎたり、ということありますよね。
やろうと思えば、あれもこれもできるけど、でもやらない!という選択ができるのは、冷静な視点を持っているからゆえのような気がします。
また、使う素材は、キップをメインにカーフの中でも強度の高いものを使っていて、私達人間が食用として用いる肉をとった残りの革しか使わないというポリシーをお持ちです。
そして、オーダーされたお客様には2週間に1度、写真と説明文を添え、製作の進捗状況をメールでお知らせしているそう。
こだわりと正直すぎるものづくりが印象的なインタビューでした。

ABOUT Shoe Republic

住所: 埼玉県加須市久下4-8-5 1F
TEL: 0480-53-3345
FAX:0480-53-3408
営業時間:10:00-19:00
定休日:水曜日
[URL]
http://shoe-republic.com/

<SHOE REPUBLIC|シュー リパブリック>情報イメージ04

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